大分県産竹材の物性研究(第1報)

大分県産業科学技術センターの平成6年度研究報告書「竹材の物性研究(第1報)」は、大分県産の竹材に関する材質特性と利用可能性を詳細に調査したものです。この研究は、竹材の成長特性、強度特性、および防カビ性能を中心に、その実用性と信頼性を高めることを目的としています。

タイトル竹産地ブランド形成研究事業 竹材の物性研究(第1報)
発行物
発行年1994年
巻号
著者名
リンクhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jwea1977/18/1/18_1_43/_pdf/-char/ja

▼まとめ

・竹に対する防カビ剤の効果を検証
・生長の長けている竹材は含有でんぷん量が多い傾向
・無処理材に比べて薬剤処理材はカビ発生が抑制されていた

研究の背景と目的

竹材は、その急速な成長と木材に似た形態から、有用な木質資源として注目を集めています。特に大分県では、豊富な竹材が存在し、竹工芸品の生産が盛んに行われています。しかし、竹林では利用されない竹資源が放置されることが多く、虫害やカビ、腐れなどによる材質劣化が利用拡大の障害となっています。本研究は、竹材利用の促進と信頼性向上を図るため、竹材の材質特性を調査することを目的としています。

研究方法

竹材の調達: 研究のために、大分県内の別府市、安岐町、日置市、竹田市の竹林から3~5年生の竹材を採取しました。採取された竹材は胸高直径が6~7cmのもので、各採取場所から5本ずつ収集しました。

材質調査試験

  1. 竹材の形状調査: 竹材の樹高、節の数、枝下の長さ、節間長さ、および含水率を測定しました。これにより、竹材の基本的な形状特性を把握しました。
  2. 強度試験: 竹材の強度特性を把握するために、曲げ試験、圧縮試験、および割裂試験を実施しました。試験は、竹材採取後1カ月、3カ月、6カ月目に行われ、試験片は地上から1.5~3mの部位から作製されました。強度測定には万能試験機を使用し、木材試験方法に準じて実施しました。
  3. 含有でんぷん試験: ヨウ素溶液を用いたでんぷん呈色反応試験により、竹材中のでんぷん含有状況を評価しました。この試験は、でんぷんの蓄積状況を調査し、竹材の成長や品質に対する影響を把握するために行われました。

防カビ試験: 竹材表面に発生するカビを抑制するために、防カビ効力試験を実施しました。試験には市販の木材用防カビ薬剤を使用し、薬剤濃度を変えて処理を行いました。試験片はカビの胞子懸濁液を撒布して一定日数後に発育状況を観察し、カビ抑制効果を評価しました。

主要な調査結果

  1. 含有でんぷん量: 竹材の成長が長いものほど、でんぷん含有量が多い傾向が見られました。特に別府採取竹は他の地域よりもでんぷん含有量が多く、生長が長いことが確認されました。
  2. 強度特性: 竹材の強度は含水率に大きく依存しており、含水率が低い竹材は高い強度値を示しました。これは、水分が除去されることで竹材細胞が収縮し、より強固になるためです。また、竹材の強度は放置期間が長くなるほど増加する傾向が見られました。
  3. 防カビ性能: 防カビ試験では、薬剤処理がカビの発生を抑制することが確認されました。特にペンゾチアゾール系+チオシアネート系薬剤が効果的であり、高い防カビ効果を示しました。薬剤濃度が高いほど効果も高くなることがわかりました。

結論と今後の展望

本研究は、大分県産竹材の材質特性に関する貴重なデータを提供し、竹材利用の促進と信頼性向上に寄与するものです。竹材の成長特性、強度特性、防カビ性能についての詳細な調査結果は、今後の竹材利用の拡大に向けた基礎データとなります。さらに、竹材の生長と環境や土壌との関係についての研究を進めることで、竹材の品質向上と持続可能な利用が期待されます。

この文献は、竹材の有効利用を目指す企業や研究者にとって、重要な参考資料となるでしょう。